離婚をしたいと考えても、相手方にまっ
たくその意思がない場合や、離婚そのも
のについての合意ができていても子ども
の親権の問題や、養育費、財産分与、慰
謝料などの金額で合意ができず、協議離
婚が成立しない場合には、家庭裁判所に
調停の申立をすることになります。
裁判によって離婚を求める(離婚訴訟)
方法がありますが、訴訟を起こす場合も
必ず先に調停を行わなければなりません
(これを調停前置主義といいます)。も
し、調停を経ることなく離婚訴訟を提起
しても、まず調停に移されることになり
ます。
●調停離婚の特徴
・裁判所が関与するが、基本は夫婦の合意
による離婚であり、離婚理由の制約はな
い。
・訴訟に比べ手続きが簡単であり、本人だ
けでも行うことができる。費用も安い
・指定された日に家庭裁判所に出頭する
・家庭裁判所の調停委員会という第三者が
関与するため、著しく不当・不公平な離
婚になることがない
・当該の離婚全般について話会うことがで
きる(子どもや財産の問題も合わせて解決
できる)
・調停で決定したことは、強制力のある調停
調書に記載されるので、安心確実である
・あくまでも話し合いであるので、相手に応
ずる気がなければ調停離婚は成立しない。
管轄の家庭裁判所に、調停の申立書の他必
要書類を提出して申立を行います。
●申立人
夫または妻
●申立先
相手方の住所地の家庭裁判所又は、当事者
が合意で定める家庭裁判所
●申立に必要な書類
・調停の申立書
・夫婦の戸籍謄本
・年金分割の為の情報通知書(年金分割割
合についての申立が含まれる場合)
●必要な費用
・収入印紙 1200円分
・連絡用の郵便切手代
●その他注意点
離婚に際して財産分与を求める場合には、
分与を求める財産に関する資料(不動産
の登記事項証明書、預貯金の通帳など)
を準備しておく必要があります。
①調停の申立があると、家庭裁判所で調停
委員(裁判官と調停委員2名)が選任さ
れます。
②調停の期日について、家庭裁判所の書記
官から希望する日時の問合せがあり、そ
の後第1回調停期日の日時・場所の記載
された「呼出状」が相手方に送付されま
す。
③第1回調停期日では
裁判官からの手続きの概要説明のあと、
調停員から申立人に対して、離婚の理由
や離婚に際しての希望・条件、離婚協議
が合意できない問題点などについての聞
き取りがあります。
※事前の準備として、この聞き取りで調停
委員にしっかりと状況把握をしてもらえ
るように、離婚を決意した経緯・原因、
離婚に際しての希望その他の事情などを
まとめてメモを用意しておくと良いでし
ょう。
この時は相手方は待合室で待機している
ので、話を聞かれることはありません。
その後、相手方と交替して相手方が事情
聴取を受けます。その後、再度申立人が
呼ばれ、相手方の主張などについて説明
があり、問題について調停員のアドバイ
スを受けながら話合いを行います。
第1回の期日で話し合いがつかない場合
は、後日改めて話し合います。1回の期
日は約1~2時間程度で行われます。
④第2回目以降の調停期日
調停委員は、双方のやり取りの中から、
問題点を整理して第三者の中立な立場
から意見を述べてくれます。話合いを
進めて、合意する可能性があれば、こ
の様な調停を1ヶ月~1ヶ月半のペー
スで行われ、状況によって半年程度続
けられます。しかし、当事者間でまっ
たく合意の見込みがない場合は、短期
間で調停は打ち切られます。
⑤離婚することや、その条件について、
調停の話し合いの中で合意できた場合
は、調停委員会のチェックを経てその
内容が「調停調書」という形にまとめ
られます。調停離婚が成立した場合は、
「確定判決または確定した審判と同一
の効力」が生じますので、慰謝料や財
産分与・養育費の支払いなどを命じる
調停条項が合意されたにも関わらず、
相手がその義務を怠った場合には、確
定判決と同様に強制執行の手続きを取
ることができます。
⑥離婚調停が成立した時点で、離婚(調
停離婚)が成立したことになりますが、
事後の手続きとして離婚届を役場に提
出しなければなりません。(調停成立
後10日以内に、調停調書の謄本を添付
して提出します)
※注意
離婚調停において、「協議離婚をする
こと」が合意される場合もあります。
この場合は、調停が成立しても離婚は
成立していません。改めて離婚届を提
出して初めて離婚成立となります。
●調停不成立
調停委員を交えた話し合いを数回にわたっ
て行っても、当事者間で合意できない場合
や、相手方が調停に応じず合意の見込みが
ない場合は調停は不成立となり終了します。
不成立後の手続きには2通りがあります。
① さらに離婚を求めて、家庭裁判所に
離婚訴訟を提起する
② 調停に代わる審判
②の審判は、調停が不成立になった場合
でも、家庭裁判所が調停委員会の意見を
聞いた上で、当事者双方の衡平を考慮し、
一切の事情を勘案し、職権によって当事
者双方の申立の趣旨に反しない限度にお
いて、離婚の審判をするというものです。
この審判では、金銭の支払い等を命じる
こともできるとされています。
審判は、たとえば調停の過程で、ある程
度当事者の納得が得られ、社会的にも妥
当であると思われる調停案で大筋の合意
ができていたにも関わらず、当事者の一
方が、離婚合意を拒んでいるといったよ
うな場合に、家庭裁判所が調停案による
離婚が相当を判断し審判をくだします。
ただし、この審判に対して不服がある場
合は、審判の日から2週間以内に当事者
や利害関係人から異議の申立ができます。
この異議申立があると、その意義に正当
な理由があるかないかに関わらず効力を
失ってしまいます。
●調停の取下げ
申立人は、調停手続きが終了するまでは、
いつでも申立を取り上げることができま
す。取下げに相手方の同意は不要です。
取下げによって調停は終了します。